书名 战国小町苦劳谭
(资料图)
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作者: 夹竹桃
原作:http://ncode.syosetu.com/n8406bm/
翻译工具:ChatGPT
*机器输出的翻译结果UP未做任何修正,仅供试阅。标题章节号为原翻译版的顺延。*
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千五百七十八年 五月中旬(*原文网页序列号 - 201)
信忠が指揮を執る北条征伐は順調に推移していた。盤石な兵站を背景に、決して無理をしない慎重な攻略を続けることにより、ゆっくりではあるが着実に北条氏を追い詰めつつあった。
信忠指挥的北条征伐顺利进行。在稳固的后勤支援下,通过慎重的攻略而不做过度的努力,成功地逐渐追击北条氏。
ことに北条側の支城間の連係を破壊する工作は予想以上の成果を上げる。隣り合う三か所の支城があれば、圧倒的攻撃力で中央の支城を瞬く間に制圧してしまい、各支城が孤立するように仕向けたのだ。
破坏北条方支城之间的联络工作取得了意想不到的成果。如果有相邻的三个支城,就可以用压倒性的攻击力迅速夺取中央支城,使每个支城陷入孤立状态。
互いに庇(かば)い合えない距離となった支城の城主は、亀のように首を竦(すく)めて守りを固くすることに終始する。
彼此无法相互保护的城市,其城主像乌龟一样缩着脖子,一心保卫城池。
こうなってしまえば城外の情報を得ることすら容易では無くなり、斥候を放とうにも待ち伏せしている織田軍によって捕らえられてしまい、誰一人として戻ってこない有様となった。
这种情况下,获取城外的情报也变得非常困难,派出斥候也会被在埋伏中的织田军捕获,使得没有任何人能够返回。
刻一刻と減っていく兵糧の備蓄を前に、支城の城主たちは焦り始め決断を迫られることとなる。彼らが取りうる選択肢は二つ、援軍が来ることを信じて籠城を続けるか、条件の良い間に降伏するかだ。
面对日渐消耗的军粮储备,支城的城主们开始感到焦虑,并被迫做出决断。他们可以选择两种方案,一是坚守城池,相信援军的到来;二是在条件较好时投降。
そして一向に好転しない戦況を鑑(かんが)みた城主たちは後者を選択することとなった。
随着战局的持续恶化,城主们考虑到局势不断恶化,不得不选择后者。
「若様、ご下命のあったほぼ全ての支城が陥落しました」
「若大人,接到的命令中的几乎所有支城都已被攻陷。」
「ほぼ全て? 報告に当たっては具体的な数値で表現するよう申し渡したはずだ」
“几乎全部?我应该已经指示你在报告中使用具体的数字来表达了。”
伝令兵の曖昧(あいまい)な物言いに信忠が注意する。指摘を受けた伝令兵は襟を正して正確な報告を述べた。全てを聞き終えた信忠は一つ頷くと伝令兵を労って下がらせる。
传令兵的模糊话语引起了信忠的注意。被指出的传令兵整理了衣领并做出了准确的报告。听取完全部内容后,信忠点了点头,感谢传令兵并让其离开。
各支城の連係を切る戦略をとっている関係上、緒戦が最も挟撃を受ける可能性が高く、攻略が進むにつれ各支城間の距離が離れるため攻城が楽になる。
由于采取了切断各支城之间联系的策略,因此初战最有可能遭受挟击,随着攻势的推进,各支城之间的距离会加大,攻城变得更容易。
房総半島より侵攻を開始した関係から関東平野全域に点在する城々を手中に収め、現時点で織田軍が把握している約30にも及ぶ城の内、実に七割を超える23までをも支配下においていた。
由于从房崎半岛开始入侵,織田军成功地占领了散布在整个关东平原的城池。截至目前,織田军已经掌握了约30个城池中实际支配的23个,超过了其七成以上。
残り三割についても、支城として機能し得るのは沼津(ぬまづ)城、山中城といった小田原城以西の物が中心となり、他は分断されたまま積極的な攻勢など望めない状態となっている。
剩下三成的城池中,能够作为支城发挥作用的主要是小田原城以西的城池,例如沼津城和山中城。其它城池则仍处于分散的状态,无法展开积极攻势。
もはや北条は俎板(まないた)の鯉と言っても差し支えない状況となり、信忠は静子や信長が常々口にしている『戦う前に勝つ』という言葉の意味を噛み締めることとなった。
此时,北条已经被比喻为砧板上的鲤鱼,这已经不再是什么问题。信忠开始认真思考静子和信长经常提到的“在战斗前就获胜”的意义。
今になって対武田戦を振り返れば、いかに自分が準備不足であったかを痛感してしまう。また入念に準備をするだけの余裕を生み出している兵站及び諜報の重要性は言うまでもない。
回顾对武田战的准备,才意识到自己当时准备不足。充分准备军事补给和情报的重要性不言而喻。
「生き恥を晒す前に忠告してくれれば……と思わないでもないが、当時の俺は果たして聞き入れただろうか」
“如果你在我丢脸之前给我忠告的话……虽然我觉得这样想也不是没有道理,但是当时的我会真的听进去吗?”
信忠は悔恨を込めて独り言(ご)ちるが、今は過去に囚われるべきではないと頭を振って雑念を払う。そして信忠は招集した諸将を前に宣言する。
信忠懊悔地自言自语,但他摇头驱散杂念,认为现在不应该被困在过去。然后他在召集的将领面前宣布。
「北条はもはや虫の息よ。皆の者待たせたな、ついに時は満ちた!」
「北条已经奄奄一息了。大家等得够久了,时机终于到了!」
信忠の言葉に諸将たちは沸き立った。第二次東国征伐は異例の大規模遠征に加えて、長期に及んでいるため諸将たちは焦れていたのだ。
信忠的话让众将士激动不已。第二次东国征讨除了规模空前的远征之外,还持续了很长时间,所以众将士都感到焦急不安。
「北条どもはことがここに及んでも、未だ我らに勝利できると思いあがっておる。ならばその増上慢(ぞうじょうまん)を真っ向から叩き伏せ、天下に我らの覇業を示そうではないか! いざ小田原へ!」
“北条一伙虽然来到这里,仍然高估了他们能够战胜我们的能力。那我们就正面击败他们的傲慢,向天下展示我们的霸业吧!前往小田原!”
信忠の号令一下、諸将たちが気炎を上げる。北条氏にとって小田原城は繁栄の象徴であり、小田原城が健在である限り彼らの心が折れることは無い。
信忠一声令下,诸将士气高昂。对于北条氏来说,小田原城是繁荣的象征,只要小田原城还屹立在那里,他们的信心就不会动摇。
また小田原城は総構(そうがま)えと呼ばれる構造を持っており、小田原城とその城下町を丸ごと囲い込む外郭(がいかく)で守っている。
另外,小田原城拥有被称为总构筑的结构,通过外郭将小田原城和城下镇一起包围起来进行保护。
つまりは補給線を丸ごと内部に抱え込んでいる要塞都市であるため、兵糧攻め等が通用しない。
换句话说,这是一座将补给线全部纳入内部的要塞城市,因此不能通过饥饿战等方法攻破。
史実に於いて、秀吉が小田原征伐を行った折には、総距離9キロメートルにも及ぶ大規模な堀と土塁によって要塞化されていたと言う。
据史实记载,在小田原征伐期间,丰臣秀吉所对付的要塞被大规模的壕沟和土堡所包围,总长达9公里。
そんな小田原城だからこそ信忠は入念に準備を続けてきていた。焦れる諸将を抑えてまで、徹底的に周囲の支城を潰して回ったのは小田原城を外界から切り離し、完全に包囲するためであった。
正因为小田原城如此,信忠才一直进行仔细的准备。他彻底地摧毁了周边的支城,以隔绝小田原城与外界的联系,并使之完全被包围,甚至要抑制焦急的将领们。
こうして外と連携できなくなった小田原城に対し、信忠は外郭に存在する出入口である各虎口(こぐち)に自軍の将兵を布陣させた。
于是,对于失去了与外界联络的小田原城,信忠在外围的各个入口布置了自己的军队。这些入口被称为“虎口”。
小田原城のほぼ真南に位置する早川口から時計周りにぐるりと真東の山王口までを織田軍または同盟軍で取り囲む。空いている南東方面は海に面しているため、九鬼水軍及び長宗我部の水軍が受け持つことになる。
在小田原城的南边,几乎在早川口的正对位置,織田军或其同盟军将沿着顺时针方向包围到山王口的正对位置。空出来的东南方向面临着海洋,因此九鬼水军和长宗我部水军将负责防守。
早川口から水之尾口に至るまでの西方面には総大将となる信忠本軍を置き、荻窪口から久野口が存在する北方には柴田軍が、井細田口や渋取口がある東方は上杉軍及び徳川軍が陣取る構図だ。
从早川口到水之尾口西侧,信忠率领的主力军将会布阵,北侧由柴田军在荻窪口和久野口附近活动,东侧的井细田口和渋取口则分别由上杉军和德川军占领。
当初、徳川家の出陣予定は無かったのだが、機を見るに敏な家康は軍を率いて駆け付けたため参陣を許された経緯がある。
起初,德川家并没有出征计划,但敏锐的家康看机会赶快率领军队赶到,因此被允许参加。
五月も中旬に差し掛かろうかという頃に、この小田原城包囲網が完成した。北条氏としても陸海ともに完全封鎖されることなど未経験であるため、北条軍全体に動揺が走る。
五月中旬左右的时候,小田原城的围攻网已经完成。由于北条氏未曾经历过陆海全面封锁的情况,因此整个北条军出现了动荡。
信忠は北条軍が動揺から立ち直る前に次なる手を打っていた。小田原城の包囲が完成した日の夕刻に、信忠が何処かへ伝令を放つと、翌朝には驚くべきことが起こる。
信忠在北条军恢复之前已经打算下一步的行动。在包围小田原城完成的那天晚上,信忠派了一个信使去某处传达消息,第二天早上就发生了惊人的事情。
信忠本軍が布陣している西方面の更に西、小田原城を見下ろすように聳(そび)える笠懸(かさかけ)山頂に突如として真新しい城が出現した。
忠信军的阵地布置在西面,更向西,突然出现了一座全新的城池,耸立在俯瞰小田原城的笠悬山顶上。
北条側からすれば、まるで一夜にして城が出現したように見えたことだろう。その悪夢のような光景を生み出したのは、史実に於いて秀吉が実行したものと同じ策であった。
对于北条方来说,城池仿佛是在一夜之间出现的。造成这个像噩梦般的景象,是与历史上秀吉执行的策略相同的。
事前に笠懸山に築城を命じておき、その建築中の様子が見えないよう山林の様子に合わせた仮囲いで隠蔽していたのだ。
预先命令建筑笠悬山的城池,并且用山林环绕的临时栅栏遮蔽建筑过程。
そして信忠からの連絡を受けて、夕刻から夜間に掛けて笠懸山の東側からの視線を遮っていた木々を一斉に伐採したことにより、突如としてその威容を晒すことになる。
随后收到信忠的联络后,从傍晚到夜晚一并砍伐了遮挡笠悬山东侧视线的树木,突然暴露出了它的威容。
「北条の腰抜けどもは、さぞ胆を潰したことであろう」
「北条的懦弱之徒,肯定已经吓破了胆」
北条を震撼させた城を笠懸山城と呼ぶ。史実では江戸時代に入り、既に取り壊された後の石垣ばかりが残る有様をして石垣山城と呼ばれたものと凡(およ)そ同じ位置に築城されていた。
被称为“笠悬山城”的城堡震撼了北条。在历史上,它在江户时代已经被拆除,只剩下石垣,因此被称为“石垣山城”,并且它与北条存在几乎相同的位置。
笠懸山城は一見すると極普通の山城に見えるが、実は建材から建築様式に至るまでが異例尽くしの城である。
草帽山城乍看之下像是一座非常普通的山城,但实际上,从建筑材料到建筑风格都是异常的城堡。
基礎建材として鉄筋コンクリートを使用し、和城の中腹辺りから航空母艦の飛行甲板が生えているような奇妙な構造を取っていた。
使用钢筋混凝土作为基础建材,和城的半山腰上出现了一个类似于航空母舰飞行甲板的奇特结构。
小田原城からは角度的に普通の和城に見えていることだろう。航空機など存在しないというのに滑走路のような長大な平面にはずらりと砲が並んでおり、まるで戦艦のような様相を呈している。
从小田原城的角度来看,这座城堡可能看起来像是一个普通的和式城堡。即使没有航空器等存在,它的长平面看起来就像是一个滑行道,上面排列着一整列的大炮,形态非常像一艘战舰。
「これで小田原城に籠れないようにしてやろう!」
"我保证你们不能藏在小田原城里了!"
北条としては高座の弥勒(みろく)が開発した新火縄銃に希望を見出している。新火縄銃の性能は織田軍の新式銃に大きく劣るとはいえ、目視できる距離での命中精度と威力は侮れない。
北条家对弥勒所开发的新式火绳枪寄有希望。虽然新式火绳枪的性能远逊于织田家的新式步枪,但其在近距离的命中精度和威力不容小觑。
小田原城の堅牢な防衛施設から新火縄銃で攻撃されれば、従来の城攻めと比べて自軍側に大きな損害が出ることが予想された。
从小田原城坚固的防御设施中,对着新型火绳枪的攻击将会造成比传统攻城方式更大的损失,可能对己方军队造成严重影响。
これに対して信忠は、より長射程を持つ武器で予(あらかじ)め防衛設備を破壊することを選択する。その集大成が笠懸山城であった。
信忠选择使用射程更长的武器,预先摧毁防御设施。这一策略的巅峰是笠悬山城。
「さて、この城を見た北条どもはどう動くか……」
“接下来,看看北条一伙会怎样行动……”
信忠は本陣を笠懸山城へ移し、備え付けの巨大かつ高倍率望遠鏡で小田原城の様子を観察しながら呟いた。
信忠将本阵迁至笠懸山城,并且通过备有的一架巨大高倍望远镜观察小田原城的情况,一边私语着。
しかし、ここに来て信忠の予想を裏切る事態が発生する。報告を受けた信忠は思わず頭を抱え込んでしまった。
然而,在这里,发生了背叛了信忠预期的情况。信忠收到报告后,不禁感到困惑无措。
「友軍の士気がここまで下がってしまうとは……」
「友军的士气竟然下降到了这个程度……」
絞り出すように信忠が唸る。遂に北条の牙城を完全包囲し、ようやく最終決戦だと意気込んだまでは良かったのだ。
信忠的嗥叫声像是在挤压,最终他成功地将北条的要塞完全围困,于是我们为即将到来的最后决战而感到兴奋。
しかし小田原城包囲が完成して間もなく、信忠は敵だけでなく味方までも士気が低迷しているとの報告を受ける。
然而,在小田原城包围完成后不久,信忠收到报告称,不仅敌人,连盟友的士气也在低落。
織田軍の士気は依然として高い水準を維持しているだけに、有利な状況にあるにもかかわらず友軍の士気が低下する理由が判らなかった。
织田军的士气仍然保持在高水平,尽管他们处于有利的情况下,但不理解友军士气下降的原因。
信忠は急ぎ内偵を進めるように命じ、程なくして彼は友軍の士気が下がった理由を知る。
信忠命令加快内部调查,很快他就知道友军士气低落的原因。
「自軍の兵農分離が当たり前になったことで、他所(よそ)が半農半兵であることを失念しておったわ」
「我方军队的兵农分离已经成为常态了,因此我忘记了其他地方还存在半农半兵的情况。」
食料生産能力が高く、経済にも余裕がある織田軍は、その大半が職業軍人で構成されている。これに対して友軍である徳川や上杉、長宗我部にしても平時は農民である領民を動員しているのだ。
拥有高度食品生产能力和充足的经济实力的织田军大多由职业军人组成,而友军德川、上杉和长宗我部在和平时期动员他们的领民,其中包括普通农民。
それゆえに遠征が長期間に及び、農繁期を迎えてしまえば本業である農業に意識が向いてしまうのは避けられない。
因此,远征时间很长,一旦到了农忙期,农民注意力不可避免地转向了他们的主要工作,即农业。
これに対して北条側は、攻め込まれている立場であり、包囲を受けて後がない状況であるため命懸けの必死さからそれなりに士気が維持されていた。
对此,北条一方处于被攻击的境地,在遭受包围,无路可退的情况下,发挥出以命搏杀的必死精神,仍能保持一定的士气。
友軍である徳川及び上杉なども状況は把握しており、戦意高揚をするべく鼓舞しているのだが状況は改善しないでいる。小田原城の西側から猛攻を掛けたとして、士気の低い東側の包囲を破って逃亡されては本末転倒となる。
友军德川和上杉已了解情况并鼓舞士气,但情况并未改善。如果只从小田原城的西侧进行猛攻,那么就会把士气低落的东侧包围突破而逃,达不到预期目的。
どうしたものかと信忠及び首脳陣は思案したのだが、軍議は空転するばかりで名案はついぞ出ることが無かった。大将である信忠は、内心忸怩(じくじ)たるものを抱えながら静子に相談を持ち掛ける。
信忠和首脑们考虑着该怎么办,但是军议只是在空转,没有出现过好的建议。身为大将的信忠内心感到不安,向静子求教。
「案はあるけれど、試作段階の物だから性能を保証できないよ?」
“虽然有个方案,但由于是试制阶段的东西,无法保证性能。”
「問題ない。現状では何をやっても手詰まりなんだ。打開出来る可能性があるならば、それに賭ける」
“没问题。现在已经陷入僵局,无论做什么都没有结果。如果有可能突破困境,那就去尝试吧。”
「判ったよ。それじゃあ、現状であるだけを送らせるから」
“明白了。那么,我将只发送当前状态。”
「色々とあるだろうがよろしく頼むよ」
“虽然有很多事情需要处理,但拜托了,请多关照。”
それを最後に信忠は静子との通信を切った。
从那时起,信忠断绝了与静子的通信。
信忠の依頼を受けた静子は、早速手配を命じた。充分な性能評価が出来ていないとはいえ、戦国時代ではあり得ない兵器であり、石山本願寺での夜襲よりも大きなインパクトを与えるであろうことは想像に難くない。
信忠的请求得到了静子的接受,她立即下令安排。虽然尚未进行充分的性能评估,但这是在战国时代不可能出现的武器,其影响力比石山本愿寺夜袭更大,这一点想象起来并不困难。
更に静子は一緒に大量の食料と酒、更には女をも手配するよう指示を出す。どれだけ戦況が優位であろうとも、遠征である以上は節制を強いられる。
进一步,静子命令准备大量食品、酒、并安排女性陪伴。无论战况如何优势,远征标志着强制节制。
織田軍に関しては食事の内容も改善されてはいるが、友軍たちは粗食に耐えて従軍しているのだ。ご馳走や酒、さらには男だらけの世界である軍に於いて、女は特効薬足りうる。
織田军在饮食方面已有所改善,但友军仍能忍受简单的伙食与其一同远征。在这充满美食、酒和男性的世界里,女性可以是一个强大的筹码。
所詮は一時しのぎに過ぎないが、鼻先に人参をぶら下げられれば奮起するのが人の常であろう。
所谓一时的安慰不过是权宜之计,但如果前面挂着胡萝卜,就能激起人们的斗志,这是人们的常态。
「少しは手加減してやれよ」
「少しは手加減してやれよ」的简体中文翻译是“少许手下留情吧”。
「手加減はしているよ。する気がないなら、最初から小田原城を更地にしているし」
「我已经手下留情了。如果没有打算的话,一开始就会将小田原城铲平了。」
話しかけた長可が、静子の返答に苦笑する。静子は長可と言葉を交わしつつも、書類を次々と片付けていった。小山を為していた書類が、次々と決裁済みの箱へと放り込まれていくのを長可は呆然と見守っていた。
开口说话的长可对着静子的回答苦笑。静子一边与长可交谈,一边不断整理文件。长可目睹着一堆文件被整理进已批准的盒子里,有些惊讶。
「相変わらず仕事が早いな。長く休んでいたから休み呆(ぼ)けがあるかと思ったが、復帰した途端にこれか」
「工作还是像往常一样快啊。本以为因为长时间休息会有点懒散,但刚复工就这么快了」
「秋に御馬揃(おうまぞろ)えの開催が決定したからね。流石の上様も、私を遊ばせておく余裕がなくなったみたい」
“因为御马队在秋天举行已经决定了。就算是上级的人物也似乎没有让我闲逛的余裕了。”
御馬揃えとは、史実に於いて天正九年(千五百八十一年)に信長が京で行った観兵式(かんぺいしき)である。
御马整列是指历史上信长在天正九年(1581年)在京都举行的观兵式。
一説には正親町(おおぎまち)天皇に譲位を迫るため行われたとも言われているが、開催場所が牛車(ぎっしゃ)宣旨(せんじ)(牛車に乗車したまま宮門を通過出来る許可)のない者は如何なる身分の者でも乗り入れが禁じられていた陣中と呼ばれる内裏の東側であること、この場所を使用しても朝廷が問題視しなかった事から近年では否定されつつある。
据说这场比赛是为了迫使大久保重信劝说正親町天皇退位,但据称,比赛场所位于称为“陣中”的内殿东侧,任何没有“牛车宣旨”(即获准坐着牛车穿过宫门的许可)的人都被禁止进入,这包括任何身份的人。近年来,有人否认朝廷对使用这个场所的问题表示关切。
また軍事パレードということで織田軍だけのイベントと思うだろうが、馬術に通じた近衛前久(さきひさ)や正親町季秀(すえひで)、日野(ひの)輝資(てるすけ)などの公家も参加していた。
虽然这次军事阅兵可能被认为是只属于织田军队的活动,但通晓马术的近卫前久、正亲町季秀和日野辉资等官员也参加了其中。
特に近衛前久は入念に準備を進め、開催二週間前にも良馬を求めている。なお苦心して入手した良馬だが、理由は不明ながら馬を気に入らなかった前久が、翌日送り返したという逸話が残っている。
特别是近卫前久认真准备,两周前寻找好马。虽然费尽心思得到好马,但前久不知为何不喜欢这匹马,第二天就将其送回,这个典故仍被传颂至今。
他にも本来は参加できたはずの秀吉は中国攻めの折り合いで、泣く泣く不参加となってしまった。配下武将を引き連れて参加が出来なかったことを大変悔しく思い、当日行われた内容や雰囲気を知りたいと長谷川(はせがわ)秀一(ひでかず)に書状で頼んだ程である。
除了应该本来能参加的秀吉因为中国攻击而不得不无奈地缺席之外,他非常遗憾地无法带领手下武将参加,并通过书信请求长谷川秀一告诉他当天的活动内容和氛围。
それほど御馬揃えとは重要なイベントであり、参加出来ることは大変な名誉であった。
参加此次盛会是一项非常重要的事件,能够参加是非常荣幸的。
「名誉なのは分かるんだけどねえ……」
“虽然我知道这是荣誉,可是……”
呟きながら静子はため息を吐く。御馬揃え自体には文句などあろうはずがなく、むしろ記録が残っていない催しに関与できることを嬉しく思う。
喃喃自语的同时,静子叹了口气。御马队本身没有任何问题,相反,她很高兴能参与到没有记录的活动中。
では何が問題なのかと問われれば、答えは静子軍がどの順番で参加するかにあった。
如果被问到问题出在哪里,答案就在于静子军参加的顺序。
信長は最も盛り上がるであろう真ん中付近が妥当と言い、前久含む朝廷側は懇意であることを示すべく公家衆の前が妥当だと主張する。
信长认为位于正中央最为合适,会最为引人注目,而前久及朝廷一方则主张在公家们面前表示亲近,因此认为位于公家们前方比较妥当。
織田家の家中としては後継者である信忠よりも後ろというのは流石に如何なものかと紛糾し、一向に意見が折り合う様子を見せない。
织田家内部出现争议,因为继承人信忠排在后面似乎有些不公平。目前,争执仍未得到解决。
そこまで揉めるのであれば、いっそ先頭に配置してはどうかという静子の案は、当然ながら全員から無視されることとなる。
如果争吵到那个程度的话,静子提出的把自己放在最前面的建议当然会被所有人无视。
このように各方面から引き合いがあることから、静子は信長が何かしらの駆け引きに静子軍の順番を用いたいのだと察した。
因为各方面都在引用静子,所以静子猜测信长想要利用静子军的顺序来做某种谈判。
それからの静子の行動は素早く、見事の一言に尽きた。瞬く間に交渉を纏めると、信長から褒美(・・)をせしめてきたのだ。
随后,静子的行动迅速,无与伦比。她迅速完成了谈判,并从信长那里获得了奖励。
「そう言えば珍しく上様に交渉をしていたが、アレは何を要求していたんだ?」
“顺便问一下,罕见地与上様进行了谈判,他要求了什么?”
「ふっふっふ。私を政争の道具にしたんだから、その正当な見返りを要求したんだよ」
“呵呵呵。你们把我当做政治斗争的工具,所以我要求得到相应的回报。”
「ほう! 珍しいな。お前ならそんなことに頓着しないと思っていたんだが」
「哦!这很罕见。我本以为你对这种事不会在意。」
長可は静子の言葉に首を傾げる。基本的に静子は信長の役に立つのであれば、政争の道具にされようが気にもしないし、報酬など要求しない。
张可听了静子的话后摇了摇头。静子基本上若是能对信长有帮助的话,便算是被用作政治竞争的工具也不在意,也不会要求回报之类的东西。
根本的に無欲な静子が、交渉までして褒美を求めたことが異常であった。
根本没有欲望的静子竟然进行谈判并寻求奖励是异常的。
「それで、何を貰ったんだ? 土地か、金か、それとも何かの権利か?」
“那么,你得到了什么?是土地、金钱还是某种权利?”
「コレだよ、これ!」
"这个,就是这个!"
長可の質問に対して、静子は随分と低くはなったが、それでも堆(うずたか)く積まれている書類を叩きながら答えた。
长可提出的问题得到回答时,静子的声音虽然变得低沉了很多,但她还是边敲打着堆积如山的文件,边回答了问题。
長可は静子が何を言っているのか判らず眉を顰(ひそ)めるが、やがて静子が求めた褒美の正体に気付いて驚愕する。
长可不明白静子在说什么,皱起了眉头,但她很快意识到了静子所寻求的奖励的本质,惊讶不已。
「お前まさか……そんなもんを褒美っていうのか?」
“你难道认为……那也能叫做奖励吗?”
「いやあ、渡りに船だったよ。御馬揃えって色々な下準備が必要なんだね」
"哎呀,真是及时雨啊。显然准备迎马仪式需要做很多准备工作呢。”
静子の返答で長可は自分の考えが間違いではないと悟った。静子は信長から褒美として、御馬揃えの(・・・・・)裏方仕事(・・・・)を勝ち取ってきたのだ。
静子的回答让长可认识到自己的想法并没有错。静子曾经通过自己的努力赢得了丰臣秀吉的赏识,从而获得了参与御马队列背后工作的机会。
無論、信長が頭を抱えたのは言うまでもない。しかし、普段の静子から想像もできない鬼気迫る様子と、粘り強く強気な交渉についぞ折れざるを得なかった。
无论如何,信长头痛是不言而喻的。但是,她平时从未想象过的鬼气瀑布状态以及顽强自信的谈判使他无可奈何。
(ふふふ。歴史に残らなかった事柄に直接携わり、記録を残せるなんて最高! 些細な事すら見逃す気はないよ!)
(呵呵呵。直接参与那些没有留下历史记录的事情,能够记录下来是最好的!我甚至不会错过任何细节!)
歴史的には有名な信長の御馬揃えだが、その詳細な記録は殆ど残されていない。信長(しんちょう)公記には概要が記されているが、静子にとってはそれでは物足りない。
历史上著名的信长御马队,但其详细记录几乎已经失传。尽管《信长公记》中有概述,但对静子来说这并不够满足。
(記録は取捨選択されているから、その場に携わらなければ判らないことが多い。どんな些細な物事も、その裏には無数の名もなき人たちの尽力で成り立っているはず。だからこそ、御馬揃えには何が何でも関わるわ!)
(记录已经进行了取舍,所以如果不亲身参与那个场合,很多事情也就无从知晓。任何微小的事物都应该要在无数无名之人的努力下才得以实现。所以,参与齐马仪式是必须无论如何都要去做的事情!)
「褒美を寄越せと言って仕事を持ち帰ってくる奴は、お前ぐらいだろうよ。本当に何を考えているのやら……」
「一边要求奖赏,一边拿工作带回家的家伙,像你这样的人应该也就是了吧。真的在想些什么呢……」
「土地やお金や権力は既に充分持っているからね。これ以上を欲しいとは思わないし、私が扱い切れるとも思えない。『過ぎたるは猶(なお)及ばざるが如し』って言うでしょ? 分不相応な野望は持たず、足ることを知るのが幸せだよね」
「因为我已经拥有了足够的土地、金钱和权力。我不想再追求更多,因为我无法处理更多。你知道吗,过度的贪婪只会让事情变得更糟。知足常乐,没有不切实际的野心,感到满足才是快乐的关键。」
「だからって仕事……いや、仕事はない」
“所以说工作……不对,没有工作。”
「理解しろとは言わないよ。私はこれが趣味と実益を兼ねているから良いのであって、他の人だとまず満足しないでしょうね」
“我不要求你理解。因为这对我既是爱好又有实益,但对其他人可能不会满足。”
「安心しろ、一切合切理解できん。これが静子なんだな、としか思わない」
“放心吧,我什么也不明白。我只能想到这就是静子吧。”
理解できないが否定もしない、が長可の答えだった。長可の態度に静子は笑みを浮かべながら言葉を続ける。
长可虽然无法理解,但也不否定,这是长可的回答。静子对长可的态度微笑着继续说话。
「ところで岐阜のとある関所から、下馬をせずに関所を強引に突破した人がいるとの報告が私に届いたんだけど……何か知らないかな?」
“顺便说一下,我收到了一个报告,说从岐阜的某个关所中有人强行突破了关所而没有下马……你知道什么吗?”
その瞬間、長可は静子から露骨に顔を逸らした。静子は言葉を発さずじっとりとした視線を長可に送り続けるが、彼が逸らした顔を戻すことは無かった。
那一瞬间,长可明显地把脸转开,避开了静子的目光。静子没有说话,一直盯着长可看,但他没有再转回来。
しばし沈黙した後、静子は重いため息を吐く。
片刻沉默后,静子叹了口沉重的气。
「まあ下馬を命じたはずの上様が、何故かお許しになったから良いけどね」
"虽然本应该下马的大人物,不知怎么却被允许了,但这也没关系啦。"
「じゃあ気にする必要は無いんだろう。その不届き者も充分反省しているだろうし、静子は御馬揃えに集中するべきだな! うんうん」
那么你不必担心了。那个不守规矩的人也一定已经反省了。静子应该集中精力准备迎接贵客。嗯嗯。
もはや自白しているも同然なのだが、静子は生暖かい目で長可をみつつ聞き流す。
几乎可以视为自白,但静子带着温和的目光注视着长可,听过了。
このところ、岐阜にある関所で馬が暴走する事故が発生した。事故の後、岐阜内の関所には安全確保を名目に、如何なる者も下馬して通るよう布告が出される。
最近在岐阜的关所发生了马匹失控的事故。事故后,为确保安全,岐阜内的关所发布通告,要求所有人下马通过。
勿論、それだけで全員が規則を守るならば誰も苦労しない。身分をかさに着て下馬を拒否する者は沢山いた。
当然,如果所有人都遵守规则,那么就没有人感到困难了。但是,有很多人因为自己的身份而拒绝下马。
そういった者に対しては武力制圧を許可されていたのだが、そんな彼らですら手を出せない人物が何人かいる。その内の一人が、目の前にいる長可なのは言うまでもない。
对于这些人,虽然允许使用武力制止,但有一些甚至是连他们都无法动手的人。其中之一就是眼前的长可,这是毋庸置疑的。
「それで、逃げ回っている人は捕まえたの?」
"那么,逃跑的人被抓住了吗?"
「いやどうにも隠れ潜むのが得意……はっ!」
“我是擅长藏匿的……哈!” translated to Simplified Chinese is: “我擅长隐藏……哈!”
途中まで口にしたところで長可は誘導されたことに気付いた。顔色を変えた長可に、静子は小さく息を吐くと書類束を差し出す。
刚说到一半,长可便察觉到自己被引导着说话了。看到长可脸色变了,静子轻轻地吐出一口气,并递上了一叠文件。
叱責されると思っていた長可は、予想外の書類束を訝し気に受け取って中身を確認した。
长可原以为会受到严厉的批评,却惊讶地接过一大堆文件并检查了其内容。
中身は長可が追っていた風魔の間者がどのように逃亡しているのか、また協力者は何人いて、それが何者かが記載されている。
内容详细记载了长可追捕的风魔间谍是如何逃脱的,协助者数量和身份也有所记录。
長可ですら把握できていない情報が余すところなく記されており、相手が完全に丸裸にされていた。
长可甚至没有掌握的信息都被全面记录下来,对方被完全地揭露了。
思わず静子を見返すと、彼女は長可に笑みを浮かべる。
不知不觉地回头看着静子,她露出了长长的笑容。
「力業も良いけれど、時には搦(から)め手を使うことも忘れないように」
“强力也好,但有时也别忘了用拿捏的方法。”
「おまっ……なんでここまで」
"哎呀……怎么到这么远了"
「久々の授業だね。勝蔵君は良くも悪くも目立つのよ。どうしたって相手に動向を知られやすい。隠れるのが上手な人間なら、君の動向を推測しつつ逃亡するよ。何しろ命が懸かっているからね」
「好久没上课了呢。胜藏无论好坏都很显眼。无论如何,你的动向很容易被对手察觉。对于擅长藏匿的人来说,他们会猜测你的动向并逃走。毕竟这关系到生命安全。」
だけど、と呟いた後、静子は一つの書類を手に取って長可に渡す。
然而,静子嘴中轻声喃喃后,拿起一份文件递给长可。
「人間というのは長じるほどに行動様式(パターン)がある程度固定されてしまうものなの。それを行動科学的に分析すれば、自ずと相手の取る行動が見えてくるよ」
「人类随着年龄增长,生活方式(模式)会变得相对固定。如果从行为科学的角度进行分析,对方的行为模式就会自然呈现出来。」
書類には風魔の組織的な動向から、行動傾向までもが事細かに分析されていた。ここまで詳細に調べていることに若干引いたが、だからこそ誰よりも相手の嫌がる手を講じることが出来るのだと長可は理解した。
文件中对风魔组织的组织动向和行动倾向进行了详尽分析。长可虽然感到有些不舒服,但正是因为做了这么详细的调查,他才理解比任何人都能够采取对方不喜欢的方法。
「お前が敵でなくて本当に良かったよ」
“你不是敌人真的太好了”
「でも私、直接の戦闘はろくに出来ないよ?」
"但是我不太擅长直接的战斗啊?"
「……謙虚な才能持ちって反則だよな」
"谦虚的才华持有者真是太不公平了"
静子の言葉に長可はため息を吐く。彼女の言葉通り、静子自身の戦闘能力は射撃能力を除くと雑兵に毛が生えた程度でしかない。
静子的话让长可叹了口气。按照她所说的,除了射击能力外,静子自己的战斗能力只是像雜兵一樣微薄。
ただ静子の場合は、戦闘になる前にいくさ自体を発生しないよう処理してしまう。
在只有静子的情况下,会在战斗发生之前处理战斗本身,以避免战斗的发生。
(策に嵌めようにも、コイツはそれすら利用してくるんだよな。自分の思い通りにことが進んでいると思ったら、いきなり後ろから刺されるなんてことが当たり前に起こるし……)
(即使要将他设局,他也会利用此来反击。当他认为情况在他的掌控下时,突然从背后袭击是司空见惯的事情......)
本人の戦闘能力が低いのならば、直接襲撃すれば勝ち目があると考えるのは当然だ。しかし、静子相手に直接戦闘を仕掛けるということが不可能に近い。
如果本人的战斗能力低下,那么认为直接攻击会有胜算是很自然的。然而,在静子这种对手面前直接发动战斗几乎是不可能的。
そもそも静子が厳重な警備に守られた自邸からそれほど動かないし、概ね領民からの評判が良い静子を害そうとする人物は否が応でも目立ってしまうため尾張一帯が安全圏と言える。
首先,静子住宅受到严密保护,很少有人进出。其次,静子受到领民的好评,因此任何想要损害她的人都会引起注意。因此,尾带地区可以认为是一个安全区域。
本来、静子は内政でこそ本領を発揮するタイプだ。信長に臣従した初期こそ遊ばせておく余裕がなくていくさにも出ていたが、いまや静子が直接いくさに出る必要性はない。
本来,静子是那种在内政方面表现出色的人。虽然在最初效忠信长时由于没有闲暇而参加了争斗,但现在静子并不需要直接参与战斗。
「まあ静子が戦っても微妙だが、そもそもお前はいくさが始まる前にいくさを終わらせるだろう?」
“虽然静子参战的话结果也不大确定,但你毕竟能在战争开始之前结束战争吧?”
長可の言葉に静子はクスリと笑った。
长可的话让静子噗嗤一笑。
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